Hはお気に入りの黄色のワンピースを着て待ち合わせ場所に立っていた。タクシーから顔だけ出してHを呼び込み、彼女にカオザイの街へ行くようタクシーの運転手に話をさせる。


10分ほどで目的地に到着。確かにバイク屋と言うか、路上バイク屋みたいな日本では見た事が無い景色。


大通りから入った路地には所狭しとバイクが並んでいる。路上だけに、それぞれの店の境界線はよくわからず、見た感じだと10台から20台くらいの間隔に人が立っていたり、椅子に座っていたりする。


彼らは勝手にバイク並べて売ってるように見える。商売の認可とかどうしてるんだろう、と日本人的な考えがふと頭をよぎる。


お目当はホンダSH。こう言った路地には高級車は置いていない。見た目に古めかしかったり、所々キズなんかも目立つ。


暫く路地を歩くと左手に無数のバイクが置いてあるスペースがあった。その広場の右手に2間(にけん)程の間口のガレージが5軒ほどズラッと並んでいて、バイクの整備なんかをする工場みたいになっている。


それぞれ店が違うらしく、ガレージの入り口の前に整然と沢山のバイクが並んでいた。バイクには値札のような物は何も無く、気に入ったバイクの値段を店の人に聞いて交渉する仕組みらしい。


Hは目ざとくその場に入り込み、品定めを始める。ざっと100台以上は置いてある。バイクはVespaのような高級感あるバイクが並んでいた。



S「ここにSHあるの?」


H「うん、ここに沢山並んでる」



はっきり言ってバイクの事を何も知らないsevenは車体にあるSHと言うエンブレムを見ないと区別出来ない。


そこの店員にHが何やら話してる。



S「何だって?」



H「みんな高いよー」



S「幾ら?」



H「3000$だって・・・」



新車に近い値段。最初はふっかけてくる、そういう商売なのだろう。



S「まけてくれないの?」



H「ダメって言ってる」



小さなバイク整備用ガレージがいくつも並んでるのでそれぞれに聞くH。


H「だめ、ここはみんな同じ値段だし、まけてくれない・・・」


S「そっか・・・」



予定通り高くてSHの中古は買えない事が理解できたようだ。中古バイクが集まるカオザイの街で買えないなら何処へ行ってもダメだろう。



S「ヤマハなら安いから見に行こうか?」



H「嫌だ、SH以外は乗らない・・・」





終わった・・・




ここまで頑固で遠慮無い奴とはもう遊べない。今日でサヨナラする事を覚悟する。しかし、この場で言う事も出来ないので、夜お店に同伴してから伝える事にした。



とは、言うものの、切る話をどう伝えるのかという事と、Hの頑固さと遠慮無さに腹立たしく思う気持ちが、ザワザワと心の中を掻き毟る。


そんな中、一服しようと軽食を取りにすぐ近くの大通りにあるロッテリアに向かうのだった。



つづく