さて、話は12月の給料が入った最初の土曜日。Hのスマホを買いに昼3時に待ち合わせる。


珍しくsevenが到着した時はHは既に待ち合わせ場所に立っていた。



S「早いじゃん」



H「もちろん!Hちゃんは何時も早いよ!」



何言ってんだよww



S「行く店は決まったのか?」



H「うん、キンマ(そういう名前の街)の近くに安い店があるよ」



S「へぇー、そこ行くの?」



H「うん!そこがiPhone一番安かったよ」



S「そっか、そっか」



S「ん?・・・iPhone?」



H「iPhoneでしょ?」



S「iPhoneじゃなくてサムスンとかでいいでしょ?」



H「はぁぁぁああ?sevenさん、約束したでしょ?」



S「スマホなら何でもいいだろー」



いきなりキレるH。



H「新しいiPhone買ってくれるって約束でしょ!私の誕生日プレゼントなのよ?1番大事なプレゼントだよ?クリスマスよりも、ウーマンデーよりも、バレンタインデーよりも、ホワイトデーよりも!!」



S「ちょっと待てwww何でホワイトデーも入るんだよww」



H「はぁぁああ?ホワイトデーも男性がプレゼントするでしょ?」



S「ちょwwwじゃぁバレンタインデーは?」



H「バレンタインデーは男性が好きな人にプレゼントするでしょー」



S「ホワイトデーも?男性があげるの?」



H「もちろん!当たり前でしょ」



S「マジかよ・・・」



ベトナムは何故か女性に感謝する日が多い。ウーマンデーは春と秋に1日づつあって、女性に花や物をプレゼントする習慣がある。


バレンタイン、ホワイトデー、誕生日、クリスマス、あとテト休みの前に年上が年下にお小遣いを渡す風習すらある。ま、こちらは男女問わない。


しかし、なんつー女性に優しい国なんだ。過去の戦争で女性が家庭を守ったからとか、そういうのがあるのだろうか。



S「俺、iPhoneとか言った?」



H「言った!絶対に言った!」



S「んー・・・」



絶対に俺は言って無いはずだがHも頑なだ。



S「iPhone 高いの知ってるよな?」



H「うん、わかってる・・・」



S「先月バイク買ってあげたの覚えてるよな?」



H「うん・・・」



言いたい事は理解したらしい。急にしおらしくなる。


S「んで、またiPhone買ってほしいって言うの?俺はお金持ちじゃないんだよ?」



H「はい・・・じゃぁiPhoneいらない」



S「じゃ、サムスンとかでいい?」



H「いらない・・・」



首を横に振りながらHは答える。



S「誕生日プレゼントをあげないとは言ってないよ。だからサムスンやLGのにしたら?あれだって300$くらいのやつなら買ってもいいから」



優しくなだめるseven。



H「だって誕生日プレゼントだよ?1番なんだよ?恋人だよ?・・・」



S「んー・・・」



言ってる事はわからんでも無いが、納得は出来ない。こんな事してたらマジで破産だ。



S「じゃ無理だ、プレゼントは他のものを考える」



H「うん、それでいいよ。ごめんね、sevenさん怒ってる?怒らないで・・・」



S「じゃ、予定変更してまずはコーヒーでも飲もう」



H「うん」



そう言うとHは何時ものように腕を組んで頭を肩にもたれながら歩き出す。



なんか健気な雰囲気を醸し出す作戦にでも出たのだろうか。思ったよりアッサリと引いたので少々不完全燃焼になる。



ビンコムタワーと言うデパートの屋外にあるカフェに座りラテとコーラを注文する。




H「sevenさん、怒ってない?」



S「怒ってないよ」



H「Hちゃん、sevenさん怒るの嫌。優しいsevenさんが好き。だから約束して・・・」



S「なに?」



H「1.怒らないこと 2.嘘をつかないこと 3.浮気しないこと。Hちゃんももそうするよ!約束だよ?」



やべ・・・可愛い・・・



これも作戦なのか。



H「じゃ約束だよ!手を出して!」



手を出すとベトナム流指切りをさせられる。お互いの小指を絡めて親指同士をくっつける。


そしてアドリブなのか、親指同士を数回トントンとタッチしながら



H「チュッ、チュッ、ね!」




くぅぅうう、もうダメ・・・萌え死にしました。嘘のような実話なんですよ。可愛すぎる。





S「な、・・・ア・・アィ・・・」



H「え?なに?」



S「ア・・アイ・・フォン買う?」



H「iPhone?・・・もう、要らないよ・・」



S「え?なんで?」



H「sevenさん、お金無いでしょ。だから要らないよ」



S「でも誕生日プレゼント・・・」



H「ん、いいの。誕生日プレゼントも要らない。だからいつもスマイルでいてね💕」





(くぅ・・・ま、負けました・・・OTL)






皆さん、読みながら笑ってると思います。ええ、いいんですよ、笑ってくれて。これがsevenですから。




駆け引きに敗れたsevenはHのバイクに乗って携帯ショップにダッシュするのであった。




つづく