女性の大声と掃除機の唸り、そして掃除機の先が壁に当たる「ゴツゴツ」と言う音で目が醒める。




どうやら隣の部屋ではハウスキーパー達の掃除が始まってるらしい。目覚めた部屋の中は真っ暗でカーテンの隙間から日光が僅かに漏れている。




(今何時だろ・・・)




ベッドから這うようにして起きるとカーテンを勢いよく開ける。一瞬日光が眩しくて目に手をやりながら外の様子を伺う。コンタクトしたまま寝てしまったらしく、目が乾いて開けづらい。




タクシーとバイクタクシー、そして会社に向かうサラリーマンらしき人々が歩いている。そしてTシャツに短パンの白人、アジア人達も目に入る。至っていつものバンコクだ。




机の上に置いてあったコンタクト用の目薬を差して、時計を眺める。ちょうど朝の9時半を過ぎた頃だった。




隣の掃除の音が余りに煩いのでちょっと文句言おうと思ったが、安宿だけに壁も薄いしハウスキーパー達の質も低いのは仕方ない。




テーブルの上にある常温のサービスウォーターの栓を外して一気に飲み干す。そしてマルボロメンソールに火を付ける。




ふぅ・・・




ソファに座り、一服し出すと昨日の出来事がフツフツと心に滲み出てくる。




なんでこうなったんだ・・・




昨日の午後にバンコクに到着し、Nokは空港で俺の到着を待っていた。Nokはコヨーテだから仕事終えても寝ずに待ってくれていたと言っていた。




一緒にホテルにチェックインすると直ぐに愛し合った。二ヶ月ぶりのセックスで燃えた。燃えたはずだった・・・




今思えば何か違和感はあった。Nokは元々ディープキスを嫌がらなかった。でも昨日は「タバコ臭いよ」とか言って唇同士が触れる程度。舌は絡み合う事は無かった。




それと、しきりと誰かとLineしていたのも気になっていた。ダンサー仲間だと思っていたけどいつもより回数が多かった。




あと、今回訪泰した理由・・・金だ。




確かに今まで会った日数分はそれなりにお金を渡していた。それは彼女の家族への仕送りの補助として、そして恋人としての甲斐性のつもりだった。




だから1日当たりの支払額は3000パーツ程度。コヨーテだから客は取らないと言っていたが、店を休んで丸一日付き合ってくれるのだから日当以上は渡してるつもりだった。




そして彼女もそれで良しとして受け取ってくれていた。何度も何度もワイしてお金を受け取る姿は今まで見た娘達より心が篭っていたように感じた。




それが1週間ほど前にLineでNokから金の相談が入った。元々彼女の両親は片親で母が田舎に居るとは聞いている。




・母親の実家が借金のカタに取られる
・母親をバンコクに呼びたいが金が無い
・今住んでる部屋は店のタコ部屋
・母が来るならアパートで一緒に住みたい
・敷金として50000パーツ工面してほしい
・約束は出来ないけどお金は返すつもり




こんな内容だった。思わぬ大金でかなり悩んだが結局援助する事にした。タイ仲間からは捨てるつもりで渡せと言われ、覚悟した。




夜になって食事に行く途中、ナナ駅近くのVASUで両替して、近くのタイ料理屋に入ってお金を渡したのだった。




「ありがとう、お母さんと暮らせる。本当にありがとう。お母さんが来たら貴方の事紹介するね。お母さんも会いたがってたよ」




そんな事を言われ、俺は舞い上がった。だって20歳近く若い子に親を紹介すると言われて期待しないわけが無い。




そしてNokはトイレ立った。それが彼女と俺の最後の瞬間だった。




また泣きそうになってきた。騙された事、大金を失った事、旅費を入れたら相当な額だ。




もう一度新しいタバコに火をつける。大きく煙を吸って心を落ち着かせる。




今回の旅はNokにお金を渡すのが目的なのと急なので休みが取れなかったため、一泊の弾丸ツアー。今日の昼便で帰国なのだ。




もうタイに来る事は無いだろうな・・・旅行者には本当の恋は叶わないよ、やっぱり・・




悟りを開いたように頷くとおもむろに立ち上がり、辺りを見渡す。




さ、帰るか・・・




じっとしてると頭がおかしくなりそうで意識的に何か行動したかった。



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