俺のスペックを紹介しよう。名前は武田広樹、今年の10月でちょうど50歳になる。1度の結婚と離婚の経験があり、子供は2人の娘が居る。




しかし、娘達は元嫁と暮らしており、一年に1度誕生月だけ会う事が出来る契約となっている。




離婚の原因は俺の浮気。悪態を付くブタと化した嫁を愛する事が出来ず、病院に勤める看護婦と不倫関係に陥った。その時のメールを娘に読まれ、発覚した。




タイには5年前に友達に誘われて旅行したのがキッカケだった。タイ女性達の年齢差を余り気にしない性格と、物価差による経済的な優位性が俺をタイ中毒にしたのだ。




以降、年に5、6回ペースでタイに訪れ、タイ人女性に惚れて、フラれてを繰り返している。通算で8回、つい2日前に彼女に逃げられたばかりだ。




タイ人女性には共通して俺の事をこう呼ばせる。「ヒロ」、単純だが、日本でもそう呼ばれていたから他の呼び方をされてもピンと来ないのだ。




「ね、ヒロ、大使館までタクシーで行こう、お金出すから」




「ありがと、色々お金使わせちゃうからさ。日本にあるお金を使えるようになったら必ずお礼するよ」




「ありがとね、でも気を使わなくても大丈夫だよ」




コンドミニアム前でタクシーを拾い、大使館に行く。ものの5分で到着する。




Pimと一緒に建屋に入り、受付の女性に話し掛ける。




「パスポートやら財布やら盗まれてしまいまして・・・」




「紛失証明書はありますか?」




「何ですか?それ・・・」




女性は「パスポートを無くした時のガイドライン」みたいな紙を取り出し、丁寧に説明してくれた。




近くの警察署で紛失証明をもらい、それを持ってきて手続きするそうだ。警察署の場所も教えてくれた。




「ごめん、警察署で紛失証明書が必要なんだって」




「うん、わかった。警察署に行こっ!でも私は警察が嫌い。だから1人で入ってね?」




「ははは、どこの国でも警察は嫌われてるねww」




警察に行くと言った時のPimの顔が一瞬歪んだのが目に入ったが、その時の俺はそんな風に捉えていた。




彼女の歪んだ顔、それは表面上ではわからない「深い闇」が隠されていた事に気付くのは、後になってからのことになる。




警察では無くした理由や日本での住所など書類を書いて20分ほどで紛失証明書が出来上がった。Pimは近くのカフェで何か時間を潰していたらしい。




合流して再び日本大使館に出向き、さっきの受付の女性に案内されて窓口に並んだ。結構日本人やタイ人なんかが並んでいる。俺はPimと一緒に椅子に座って待っていた。




自分の番になり、窓口で紛失証明書を提出し、簡単な経緯を係員の男性に話す。男性は何かパソコンで打ち込みながら質問をしてくるのだが、途中から表情を変えながらパソコンを叩く。




「武田広樹さんですよね?名前は有るのですが年齢も住所も違いますよ?」




「へ??年齢と住所って・・・何歳で何処の住所になってます?」




「すみません、そこはお答え出来ないんですよ。ただ、紛失証明に書いてある生年月日と住所が合いません」




「んなバカなwww」




「じゃ両親の名前を言うので確認出来ますか?武田浩と八重子ですが」




「んー、その方も、この住所にはご不在ですね」




顔から血の気が引いてくる。俺って日本に居ないのか??俺って誰??




「申し訳ありませんが、紛失証明書の記載内容が証明できない為、手続きに移行は・・・」




「わかりました。もう一度来ます・・・」




もう一度来るって言っても俺自体が日本に存在して無いのだからどうにもならない。は?何コレ・・・俺誰よ・・・




「ね、どうしたの?」




「手続き出来ないんだって・・・俺の事が日本で証明出来ないんだってさ・・・」




「えー、そんな事があるの?何か間違えて書いたとか?」




「俺にもわからないんだよっ!」




つい声を荒げてしまい、Pimはビクッと肩をすくめた。




「あ、ゴメン・・ワケわかんなくて・・」




「ううん、大丈夫。何か食べに行こっか。飲むだけでもいいからさ」




「うん、ありがと・・・」




俺は今存在しない?じゃ俺って誰だよ・・見てくれも変わっちゃったし、本当は俺って武田広樹じゃないってこと?この記憶は偽物なのか?




青ざめた俺の手を引きながら歩き出すPim。途方に暮れた俺に、唯一手を差し伸べてくれるPim。彼女がもし居なかったらどうなっていたのか。




この状況の重大さを改めて知る事になったのだった。




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