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「ケン!すぐ来て!」




電話でニムから悲痛な叫び。




「どうした?」




「タクシーの人がケンと話ししたいって」




「は?タクシー?」




「とにかく早く!」




ソイカーボーイで客引きをしていた俺は、ダッシュでアソーク通り側に向かう。




ニムのトゥクトゥク待機はソイ23でやるつもりだったが、夜の時間帯はトゥクトゥクを待機させるスペースは無く、あの通りを走るタクシーからかなりのブーイングがあった。




で、アソーク通り側に行かせたのだが・・・




なんと無く予想はしていた。突き当たりを右に曲がり、ニムとトゥクトゥクを探す。彼女は数人の男たちと一緒に何か話をしている。




「お前か?ケンは」




「そうですけど」




「このトゥクトゥクはお前の?」




「いや、店のだけど」




「どこの店だよ」




「チャッピーってさっきから言ってる」




「うっせい!お前は黙れよ!」




ニムが口を挟んで、男達はドスを効かせながら恫喝する。




「チャッピーってすぐそこの店だろ・・?まだやってんのかwwとっくに潰れたと思ってたww」




「で、何の用で?」




チンピラの挑発には乗らない。まぁ、正直言って怖いってのもあるけど・・・




「お前さ、ここ、誰に断ってトゥクトゥク止めてんの?お前ら邪魔だしさ、まさか俺らの稼ぎ減らそうって事?」




「い、いやそんなつもりは無いよ。店に客送るだけ」




「んな事は俺らに任せろよ」




た・・・確かに・・一理ある・・




まぁ、1日1組か2組乗せるだけなので、ここの場所に拘る必要は無い。




「すんません、もう邪魔しませんから」




そう言って彼らに3000バーツを渡す。




「おう、まぁ解ってくれればいいんだよ。でも、これからこの場所使いたいってなから俺に言いな。一か月1000バーツで使わせてやるよ」




「そん時はよろしく!さ、ニム帰るぞ!」




「うん」




ニムは俺がもっと闘うと思っていたらしく、納得出来ないような表情でトゥクトゥクに乗る。




「何で言う事聞くの?お金まで払って」




「まぁ、店やってる以上、揉め事は長い目で見たら得な事はなにも無い。金で済むならそれでいいかってのがここの流儀だろ?」




「まぁ、そうだけど。でもケンは男らしく無いんじゃないの?理不尽な事は嫌う人だと思ってた」




「何とでも言えよ。俺はお前らが無事に過ごせるなら何でもする。土下座だってすると思うよ。つうかさ、ニムは男っぽ過ぎるんだよww」




下手に奴らのバックがマフィアとかなら、逆らわないのが常道だ。それがわからない以上、リスクは負うべきで無い。




今後はソイカーボーイ待機は止めて、店の前にトゥクトゥクを待機させることに。




「は?あいつら!!何て奴なんだい?」




店に戻って長介の怒りの言葉。




「名前は聞いてないよ」




「まぁ、あそこのボスは知ってるから、今度話しとくよ」




「いいって、金で済んだし、波風立てたく無い」




「んでも、私のメンツはどうなるんだい?チンピラ風情に店の名前出して、金払うってのが納得出来ん」




いつに無く怒る長介。ここらは長介の庭なんだろう。




「まぁ、次何かあったら頼むわ。俺が頼んでるんだから今回は大人しく頼むよ」




「んー・・・・」




納得行かない様子だが、黙り込む長介。要するに、わかったって事だろう。




「ヒロ!」




振り返るとパール色のドレスを着たPimが立っていた。胸元がパックリ開いていて、形の良いバストが溢れている。髪を後ろで結っていて、小さな顔と首元のうなじがセクシーだ。




「ど、どうしたんだ?」




「今日から店で働くんだってさ」




長介が言う。




「ね、私可愛い?」




「う、うん。でも・・・胸元が空き過ぎじゃない?」




「キャハハハッ!ヒロ、カラオケ嬢はこれ位が普通でしょ?」




「確かに・・・」




「ママ、いいの?」




「まぁ本人の意向だし、何かあっても私らが見てるから大丈夫だろ」




「んじゃ、クスリ抜けたって事?」




「まぁ、そうだね。大丈夫だと思うよ」




思わずPimを抱きしめる。今までの想いが湧き出てくる。やべ、泣けてきた。




「い、痛いよ・・・」




「ご、ごめ・・・」




「んでケン、Pimはオフ有りでいいのかい?直ぐにトップレディになると思うよ?お店の事考えたらオフ有りなんだけどさ、どうなのよ?」




「え?・・・」




い、嫌だ・・・Pimが他の男に抱かれるのは許せない。でも彼女の意向も知らないし、中途半端な今の関係で嫌だと言って良いのか・・・-?




「どっちなんだよ!」




「私はヒロが決めた通りでいい・・」




や、やば・・・嫌だけど嫌って言っていいのか?・・・




「・・・・・・・ヤダ・・・」




「は?聞こえないよ!」




「Pimごめん!!俺はPimがペイバーされるのは耐えられない!俺はオフ無しにして欲しい!」








「・・・・・ハハハハハo(≧▽≦)o」







周りがドッと笑う。




「へ?」




「なに躊躇ってんだよww当たり前の事悩んでどうすんのww」




「ふーん、ヒロは私がペイバーされても良いって少しでも思ったんだ・・・」




「い、いや・・・」




長介達は俺が何て答えるのか、からかったらしい。




「おい、頼むよ・・・。さっきまで、あいつらと揉めてたんだからさ・・・心に余裕ないし・・・」




「ヒロ、私この店で頑張るよ!私はヒロだけのものだからね!心配しないで」




「う、うん・・・」




そうして、晴れてPimはチャッピーの一員となった。




俺はシャム姉妹との約束は果たせたのだろうか。それが無性に気になった。




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