慣れない凸凹路をヨロけながら歩く。僕のすぐ横を過ぎる何台ものバイクやソンテウ。ソンテウにはアジア系の人やファラン達が所狭しと並んで座り、路肩に立ち並ぶ彩りどりのネオンや看板をボーッと無表情で眺めている。


僕は暗がりの中で5メートル程の開けた路地に立つ「ソイ6」の標識を何とか見つけると、徐に右に曲がった。


激しい音楽の音。道路の両脇にある店のカウンターに座る女の子達からは無数の視線。そして道路の中央には三輪バイクが並び、食べ物や飲み物、洋服や靴などを売る人たちが忙しそうに客の相手をしていた。


僕はあても無いまま歩く。「妖怪人間ベラ」のような化粧をしたバービアレディ達の視線と敢えて合わさないように店の奥の方を見回しながら歩く。



少し店を覗いた感じだと客で多数なのはファラン達。そして少数のアジア系の人達。でも、服装が日本人ぽくは無い人が多いように見える。日本人ぽい人はソイを歩いてはいるが、店に腰を落ち着かせている人は少ないように感じた。


少し歩くと右手に大きめのバーを見つける。看板には「Roxy bar」と書いてある。下調べでパタヤのブログをチェックした時に、確かそのブロガーさんのオキニが居る店だったな。と思い出す。


初めてソイ6に足を踏み入れたが、よく見ると比較的若い子も多いように見える。中には中々の美人も居る。思っていたよりも平均点は高いように思えてきて、少しだけテンションが上がる。(元々、バービア嬢の平均点をかなり低く見積もっていたこともある)


「Roxy bar」を通り過ぎて少し進むと黒い影が突然僕の進路を塞ぐように店から出てくる。肌も黒いが衣装も黒いその姿は、案の定「妖怪人間ベラ」風の化粧をした女性だった。


彼女の大きな目は半開きで、真っ赤に塗られた唇は少しだけ開いている。腰まで届く黒髪と肌の黒と衣装の黒、そして夜という事もあって黒いかげから白い歯と真っ赤な唇だけが浮いているような錯覚を覚えた。


彼女は僕の数十センチ手前でこちらに振り向くと「これ以上通さないよ?」と言った視線で立った。本来なら避けて通るのが僕なのだが、何故か意識的に彼女に向かって歩き続け、そして軽くぶつかった。


「An・・・」


彼女はそう言うと、ワザとヨロけながら僕の目を覗き込む。久しぶりのタイレディを前に、何を言っていいのかわからない。


「Oh、Sorry na」


こちらもわざとらしくニヤケながらそう答えるのが精一杯。洒落た言葉なんぞ持ってない。


立ち止まる僕の首に彼女はそっと両腕をかけると何も言わず目を合わせ、口を半開き状態のまま何かを言いたげな表情をする。しかし、彼女は何も言わない。


「・・・・・」


ほんの数秒だと思う。しかし、妖しげに見つめてくる妖怪人間ベラのようなメイクの目力に吸い込まれそうになる自分。


「OK・・」


そう答えると、僕は彼女の腰に手を回し、カウンターに向かって歩き出した。


それがバービア嬢Iとの出会いだった。