3話に行く前に補足から。

今回の旅はいつになく、気合いを入れていた。まずは荷物。ブランドのシャツやポロシャツなどを買い漁ること10着くらい。下着も5着購入。靴は新品含めて三足、サングラスやドーピング薬、帽子に至ってもベースボールキャップなど三種類を持ち込み、色んなアクセサリーやタグホイヤーの腕時計(中古だけど(笑))なんかも用意。


下着や服だけなら2週間は滞在できる。そのくらい持ち込んだ。これも全てはレディ達に少しでも気に入ってもらうようにとの憐れな努力。


そう言うこともあって小遣いの方は七泊で23万程度しか用意出来なかった。バンコクで今までのように使ってたら危うい。今回の目標は20万以下で遊ぶ事だ。


これだけ準備してもどうしようもない事が三つほど。老いによる顔のタルミやシミ。そして薄毛。あとは腹周りの贅肉だ。


どんなに着飾っても拭えない事実。果たしてこんな俺でも気に入ってくれる子が居るのか?ってのが不安だった。勿論彼女達は仕事なので上辺では仲良くしてくれるのはわかってる。でも、欲しいのはそこじゃない。


愛ある援助交際だ。自分がもっと若ければ普通のカップルの如く、チップのような金は使いたくないのだがそれは無理と言うものだろう。その辺は過去の経験で勉強した。俺程度の男では無理なものは無理。


そんな気合いで望んだ今回の旅でした。



3話


Iへのドリンクを許可した途端、俺の両肩を背後から掴まれギョッとする。振り返ると肌は白いが達磨のような姿のレディが厚化粧もものともせずに微笑んでいる。


今日のこの店のコスチュームは黒いスポーツブラのようなトップスと黒いパンツ。コヨーテ達がよく着るような超ローライズなやつ。


達磨だけあって巨乳なのは見てわかるが、それ以上に突き出た腹が俺の目に飛び込む。海外の女性に比較的多いが、何故崩れた体型でも平然とそんな姿をしていられるのか、と言う疑問が湧いてくる。


仕事だから?仕方ない?のかも知れないが、見た感じ全然気にしてる気配はない。むしろ、アッパレと言った感じすら覚える。


「私もドリンクいい?」


指を一本立ててせがんでくる達磨。髪型はコケシみたいな黒髪ロングストレート。うん、コケ達磨と名付けよう。


「ダメ。Iだけna」


ここはキッパリと断るseven。一度いい顔すると何人もの連中にカモネギにされるのは過去の経験からだ。


コケ達磨も慣れているようで、嫌な顔もせずにすぐに引き下がる。その辺りは中々感心した。次来たらタマダーで一杯奢るくらいならいいかな。まぁ、喜ばないとは思うけどw


そんな事もあって時間を潰している間も、Iは俺への攻撃を休める事はなかった。俺のほっぺや首筋に嫌味がない程度にキスを繰り返す。


俺がタイ語がダメでIは英語もイマイチ。中々話すこともままならない。そんなでも、必死にアピールする姿は少しだけ好感が持てる。とっくに飲み干された彼女のドリンク。しかし、追加を求める事も無い。


完全なファラン仕様のスペック。人懐っこいし、日本人のライバルは絶対に居ない。それだけは確信出来る。


何かを欲するわけでもなく、只々俺に甘える行動をするI。このパターンは初めてだ。


少し可愛く思えてこちらから軽くキスをする。それを受けるように唇を向けるI。そんな事を繰り返しながら彼女の顔をマジマジと見つめる。



ん?化粧を取ったら案外可愛い??



大きな目と二重瞼。肌は褐色だが綺麗だ。どす黒いアイシャドウを取った姿を想像すると、案外良いような気がしてくる。腰まで届きそうなワンレン黒髪にちらほら見える白いフケも、埃じゃ無いのか?と錯覚すら覚えてくる。


既に彼女の妖力に捕縛されている事も気付かず、段々とIに興味が湧いてきた俺は徐にアイフォンを取り出すと、ダウンロードしておいた写真をIに見せた。


「これ、俺食べた事ないから食べて見たい」


手振りを交えながらムーガタ(タイ風焼肉鍋)の写真を見せた。あまり好きではないが、タイスキの経験は何度かある。しかし、ムーガタは未だ経験が無かったので今回の旅で食べようと考えていたのだ。


「OH アロイna」(美味しいよね)


「これが食べれる場所へ一緒に行かないか?」


「いいよ!でもルームメイトも誘っていい?」


「オッケー!この店の子?」


「うん!そうだよー」


「じゃ、二人バーファインするから連れておいでよ」


「わかった!」


英語とタイ語と身振りでそんな会話交わす。Iは奥へとルームメイトを探しに行く。



「ムーガタna! オッケー!!アロイマクマークna!」
(ムーガタいいよ!とても美味しいよね!)



突如、背後からのしわがれた声に俺は振り返る。


そこにはコケ達磨がIと一緒にニコニコとこちらに向かって来る姿が目に入った。