Iは服などのセンスが乏しい事を自分でもある程度わかっている様子。化粧についてもベラ風の化粧はイカンと少し教えたら健気にそれを今でも守ってる。


KOMOVのネックレス、結局二つあげたんだけど、それも毎日してくれてる。そんなとこが可愛いなぁ、なんて感じてます。


特に瞼を青や黒のアイシャドウを塗り潰すのは今時のファランでも嫌なんじゃないか?タイの子達はみんな眉を太く塗るのは俺的には嫌だが、まぁ仕方ない。何処が良いのか不明だが、若い子達の流行りらしいし。


そういう意味で言うと過去にタイレディ二人くらいに


「チン毛ボーボー過ぎだろ!カットしれよ!」


と言われても、何もやってない俺は可愛くないヤツなんでしょうね。



14話



母親に連絡をしたらしく、夕方6時頃に実家に帰るとIは言う。それなら俺も夕食でも食べたいと言う事で飯を食いに外に出る。


ホテルを出て道路に出て唖然。何も無い。Iがホテルのオカミさんに言ったら自家用車で飯が食える場所まで送ってくれるそうだ。中々のサービス。


5分くらい走ると「荒野のガンマン」に出てきそうな寂れた通りで降ろされた。道幅は広いが道路脇の店はどれもボロで営業してるのかもよくわからない。


そこの屋台風の店に入る。そこはタイ風おでん?みたいな専門店でそれしかないらしい。しかし、それがまた美味い。


Iは辛いヤツをトッピングしてたが、元の味は出し汁濃厚で超美味い。イカや肉団子、牛血の寒天、野菜など色々入っている。結構でかい皿で出たが二杯も食ってしまった。名前はIに聞いたが覚えられなかった。これで一杯20Bとか嘘みたい。田舎万歳!!



「お母さんと会ったら晩御飯でも一緒に食べろよ」



そう言って1000Bを渡す。2000でもいいかなとも思ったが、あくまでも寸志だ。2000は多すぎかなと。


さて、どうやってホテルに帰るかだ。Iもどうやって実家に帰るんだろ。



「どうやって帰る?俺はどうすれば?」


「大丈夫、あのソンテウで帰れるよ。私も一緒na」


「ありがとう」



こんな場所から一人で帰る厳しさをわかってくれたのか、ホテルまでIも戻ってくれるらしい。なんつー優しくていい子なんだよ・・


嬉しくなってIを抱きしめ、頬にキスする。




こっちのソンテウは屋根に色々な荷物を乗せるらしい。買い物袋を持った人や段ボールなんかを持った人が屋根に荷物を載せて乗り込んでくる。


パタヤとは違ってやけに生活感ある人達が利用するようだ。田舎町ならではの光景なのか。


間も無く出発。俺はIと隣同士で手を繋ぐ。向かいのババアがそれをチラ見してきて何か嫌な気持ちになる。


高校生くらいの小僧がスマホでゲームをしているのをぼーっと見る。アイフォンでは無いが綺麗なスマホだ。


こんなガキが綺麗なスマホで、barで働くIは割れたアイファン4か。俺は何気に虚しい気持ちになる。



ん?待てよ・・・



もう走り出して15分は経つ。景色も既に山道になっている。と言うかジャングル!?



「おい、この道でいいのか?」


「OK(^-^)」


「マジか・・」



田舎町のソンテウだけに、長距離環状線なのか。一周30分とかの。それなら仕方ないかと無理に納得する。



「・・・・」



1時間はとっくに過ぎて、未だにジャングルの一本道なのですが・・・


途中で小さな町に着いて交差点とかで人が降りて行く。もう車内には俺とI、そして途中で乗り込んだジジイとその孫しか居ない。



次の森が開けたところでIがブザーを押す。



はい?何も無い場所で降りるの?



「着いたよ!」


「う、うん・・」


恐る恐るソンテウを降りる。辺りは荒れた草原みたいな場所。草原の奥には山が見える。



「こっちー」



草原の中にある、あぜ道のような場所を手を繋いで歩く。



「この奥に私の家があるの。少し歩くからね」



はい?マジっすか!!俺、お前んち行くわけ??



途中から「もしかしたら」とは感じていたが、見事にビンゴ!!


急に緊張してくる。俺、どんな風にしてればいいわけ?親父がバンコクから帰ってて、ぶっ殺されるとかじゃないよな?



「お、お父さんはバンコクに居るんだよね?」


「うん、そうだよー」



俺が気にしてる事がわかったみたいで少し笑っている。


山の麓に着く頃一軒の家が見えてきた。外で数人の大人達が涼んでいる。


「サワディーカー」


その後、Iは何かをその人達と挨拶しながら会話している。その人達は笑いながら俺を見てる。ヒューヒューみたいな声も。きっと俺の事も紹介してくれたんだと思う。どんな紹介をしたのかは不明だが。


次の家はスピーカーでタイソングをガンガンに流してる家だ。おっさん一人が外に出ていたが、忙しくしていたからか、その人には挨拶はしなかった。


「あれ、何してるの?」


「音楽流してる」


「それはわかってるwwなんで?」


「あそこに集まって音楽流しながらお酒飲むの」


「誰が?」


「近所の人が集まって」


「いつも?」


「うん」


手振りと拙い英語でそう教えてくれる。ちと意味がわからないので俺の誤訳の可能性もあるが。


そして3軒目。ここが最後らしい。


「ここが私の家だよ」


庭で椅子に座る老婆が一人。


「あれがママ」


「サワディーカップ」


「サワディーカー」


ワイをしながらお母さんに挨拶する。お母さんは立ち上がると丁寧な挨拶をしてくれた。年は70過ぎだと思う。立ち上がると足を引きずりながら家の中に入っていった。


平屋の家で20畳一間みたいな造り。屋根は高く、電気は点けてないので家の中は暗くてよくわからない。


お母さんが座っていた椅子に座るようIに言われるが、俺は断った。お母さん、足悪いのにその席を取るわけにはいかないしね。


「マンゴー食べる?」


「うん、貰うかな」


Iは庭に歩き出すと、植えてあるマンゴーの木にジャンプしてもぎ取る。それをカットして塩と唐辛子で食べる。


「美味しい?」


「うん、美味しいよ」


「いいなぁ。マンゴーって街で買うと幾らだっけ?」


「20Bかな」


「じゃ20Bが家にあんなたくさん実ってるのかw」


「でも売らないで食べるしねぇ」


「そりゃそうだww」



程なくしてお母さんがマンゴーのジャム?みたいなものを出してくれた。煮詰めたような感じで干し柿みたいな濃厚な甘さ。


「美味しいじゃん!うん、めちゃ美味しい!!」



勿論、お世辞も含めて大袈裟に美味しいを連発するseven。



「ママ、これsevenから・・」


バッグから1000Bを出すと母親に渡すI。


お母さんは俺を見て拝むようにワイをする。なんか金持ちでも無い俺が、偉そうに人に施しているようで少し恥ずかしくなる。


1時間程してかなり辺りが暗くなったので帰ることに。帰りのソンテウは果たして拾えるのだろうか。


「帰りはどうすんの?」


「バイクで帰るよ」


「え?でもバイク放置出来ないだろ」


「明日お母さんが取りに来るから大丈夫」


マジか・・・


なんかすげー罪悪感。俺の軽はずみな行為が連鎖しながら、こうして人に迷惑をかける。最悪だ・・


もう1000B置いて行こうかと悩んだが、それじゃ金で解決するみたいでそれも嫌だ。


万が一、次回来る時があったなら、それなりの土産を持ってこよう。


Iのバイクの後ろで時々「キューティハニー乗り」を楽しみ、1時間半のバイクの旅でホテルに戻るのだった。