月末の訪泰に向けて色々と準備を始めました。着るものや持ってくものなんかを考えながら通販サイトを眺めてます。

 皆さんもよく言われますが、行く前のこういった準備なんかが一番楽しいですよね。



         §



「ウタラディット行きのバスは予約いっぱいで取れなかったよ……」


 部屋に戻っていきなりIはそう話した。ウタラディットにはバンコクで働くIの地元の友達と三人で向かう約束だった。年末で予約が厳しいとは聞いていたが、予約自体はバンコクの子がするので大丈夫だとも聞いていた。


「マジか……。友達も?」

「友達はバスが取れた。でも私達の分は無理だったみたい」


 本当かよ……。聞いてねぇ……。


「で、どうするんだ?行くのやめるか?」

「ううん、飛行機にする」

「え?飛行機?明日か?」

「うん」


 飛行機って……。トウガラシさんの解釈通りじゃん。


「空港ってどこに行くわけ?」

「ピサヌローク」


 早速チケットがあるか、ネットで確認する。LCCの昼過ぎの便があったので直ぐに行きだけ二人分予約した。


「予約は済んだよ」

「何時に着くの?」

「14:00頃かな」

「わかった」


 Iは誰かに電話をかける。流れからして田舎に居る友達か誰かだと思う。五分ほどで電話を終えた。



「でも、空港から家まで遠いんじゃ無いの?」

「お母さんが迎えに来てくれるって」

「マジか!」


 あの足の不自由なお袋さんが空港まで来るとは。車も持ってないはずなのにどうやって来るのだろう。


「どうやって空港まで来るの?」

「親戚の人の車を借りる」

「そか……」


 明日のエアチケットを確保した安堵感で俺は少し冷静になる。


 ウタラディットへは元々バスで移動する計画だった。前日のトウガラシさんの解釈では飛行機でのクスリを運ぶ話。移動手段が相違する点が唯一、Iを信じる拠り所だった。


 それが結局飛行機での移動となった。偶然なのか、それとも……。流石に母親もグルでは無いと思うが、到着時間に対する手際の良さも彼女らしく無い。こんなにテキパキしたのを見たことが無かった。


 再び心が不安定になる。極度の動悸。胃が痛い。


 突然、考える事を放棄するように俺はシャワー室へ向かった。



         §



 シャワーを終え、タイ特有のお笑いバラエティ番組を見る。映像の編集時に付ける少し大げさな効果音が、俺の子供の頃のTVを思い出す。


 Iはひとしきりスマホをいじった後、お腹が空いたと言うので一緒に近くのセブンイレブンまで買い出しに出かけた。相変わらず、自分用に小さなカップ麺にお湯を入れ、俺が好きな冷凍カオトム(タイ風お粥)を何も言わずに手に取りレンジで温める。そんなIの姿を見ながら俺もいつも買う甘めの缶コーヒーを手にした。


 いつもと変わらない……


 そんな雰囲気が彼女への不信感を徐々に和らげる。ほんの少しの安堵感がすり減った心を少しずつ満たしていく。


 部屋に戻り、軽く食事を終えると互いに寝支度を始めた。


「久しぶりだよな」

「うん……」


 ベッドの中で自然と唇が重なり、何度も見つめ合いながらキスを繰り返した。彼女への不信感を無理矢理に忘れようとしたのかも知れない。俺は一心不乱に彼女の唇を貪り、Tシャツの上から豊満な胸を揉みしだく。


 我慢出来なかった。


 彼女との愛を確かめてこのモヤモヤを忘れたい。少し強引に彼女の服を剥ぎ取り、こぼれ出た乳房にむしゃぶりつく。


 漏れてくるIの荒い吐息。それを聞いて更に激しく求める俺。そして俺の手は彼女のパンティに手を滑らしていく。


「seven……」


 突然Iの手が俺の腕を掴み、動きを制止した。


「ん?どした?」


 Iは閉じていた目が開くと俺の目を見つめた。


「今日は生理なの……」


 スッと気持ちが下がっていく。それが本当なのかどうかはわからない。確かめたくもなかった。


 俺はパンティから手を抜くとIの頬にキスをする。正直、余裕あるところを彼女に見せたかった。セックスできない不満を感じられるのが嫌だった。冷静でありたかった。


「オッケー。今日はしないよ。だから終わったら教えて欲しい。その時は一杯しよう……」

「OK」


「ごめんね」では無く、「OK」と言う返事が少し気になった。OKはいつもの素っ気ないメールでの返事と同じ。考え過ぎなのかもしれないが、もう少し違う言葉が欲しかった。


「じゃ、明日は早いから寝ようか」

「OK」

「…………」


 こうしてその夜は色んな意味でのモヤモヤが解消されないまま過ぎることになった。