sevenは相変わらず訪泰については海外出張と言ってます。多分、死んだら地獄に行って、閻魔様に舌を引き抜かれることは確定でしょう。



「あんた、海外出張の前になるとやけにオシャレしたり服買ったりするよね」

「……そう?」

「あっちの女にいいカッコつけたいのはわかるんだけどさー。それよりも身体絞ったりもしてないし、その薄毛じゃぁねぇ……」

「…………(殺すぞババァ……)」


 そんな事は言われんでもわかっとるわい。癌を克服した嫁は、元気も毒舌も今まで以上に満開になりました。




 はぁ……




         §


 朝8時ごろ目覚めた俺たちは荷物をまとめ、タクシーでドンムアンに向かった。Iは俺のスーツケースに、彼女のリュックに入りきれない荷物を詰め込んでいだ。今思うと、その行動は不審だったかも知れない。


 Iの態度がいつも通りだった事もあり、昨日よりは気分は悪くない。終始、一緒に手を繋いで仲良く歩く。


 空港2Fで不味いタイフードを食べる。まじ、ここの飯は不味い。タイ人のIですらほとんどを残すくらいの質の低さ。ま、どう見ても調理免許も無さそうな若い子が作るんだしね。


 ロビーではAir Asiaがクリスマスのイベントみたいなのをやってたので記念撮影。


B6633816-8971-4C05-A8EA-2F3992E1F51A

タイ人ってこういう場所で写真撮りたがる。そんなに凄い訳じゃないのになんでだろう。といつも思う。



 彼女の足元を見ると靴は履いていない。飛行機の中でもサンダルだった。靴下にクスリを入れて搭乗する事は無かったのだ。


 やっぱり、思い過ごしなのかな……


 そんな気がしてクスリの事は徐々に頭から薄らいでいった。



         §



 定刻通りにピサヌロークに到着。実は昔、GOGO 嬢のRとスコータイ遺跡へ旅行した時にもこの空港に降り立ったのだが、勿論Iの前では初めてのフリをした。


 荷物を受け取り、建屋を出るとIのお袋さんが足を引きずりながら歩いてくる。


「こんにちわ」


 俺はワイして挨拶をする。お袋さんもついで?みたいな感じでワイしてくれる。この人、シワシワのお婆さんに見えるが、なんと俺と同じ歳だ。前回、Iの実家で会った時より、ジーンズなんかを履いていて少し若返ったようには見えたが顔の深いシワは消える事はない。


「やぁ!」


 駐車場の方から恰幅の良いおっさんが来る。バーコード頭の人。


「誰?」

「向かいに住んでるおじさんだよ」


 そのおじさんは勝手に俺のスーツケースを掴むとゴロゴロ引いて駐車場へ行く。


「は?どこ行くの?」

「あの人の車に乗るの」


 なるほど。向かいのおじさんに頼んで空港まで迎えに来てくれたのか。なんか悪いな……。


 おじさんの車はタイでよく見かけるピックアップトラックだ。荷台にスーツケースを置いて狭い後部座席に俺とIは座る。


 ヤバイ……狭すぎる……。


 背もたれは直角、膝は前のシートにくっつく。だから斜めに座るしかない。


 トラックは空港を出て大きな道路をかっ飛ばす。車が揺れ、尻と腰にダメージがくる。


「家までどのくらいかかるんだ?」

「んー、二時間かな」

「マジか!」


 ケツの痛みに耐えながら結局二時間半以上の時間がかかった。


 見覚えのある道路。高床式の小屋。道路脇の路地に入って直ぐにIの家に着く。向かいのおじさんは荷物を降ろしてくれた。


「ありがとう」


 田舎は近所同士が仲良くてこんな事も助け合うんだなー。なんて少しほっこりした。だが、金は別だった。


「seven。2000Bおじさんに渡して!」

「お?お、おぅ……」


 で、ですよねー……


 俺はお金を渡し、再びワイしながらお礼を言う。俺はIの家に入り、水をご馳走になった。


 Iは着替えに、家の奥に行く。すると入れ替わりにお袋さんが俺のところに寄ってきた。


「あんた。Iとは真剣なんだよね?」

「……は、はい……」

「わかったよ」


 Iが俺の事をどんな風に紹介しているのかわからない。少し歯切れの悪い返事をしてしまった。勿論、Iは俺が結婚して子供もいる事は知っている。孫がいる事も。



         §



 暫くすると隣の家の人(40くらいの女性)がやってきた。お袋さんとIに話している。なんの話だろうか。


「seven。行くよ!」

「ん?どこへ?」

「隣のうち」

「マジか!」


 今回の旅は「マジか!」がやけに多い。ま、それも旅の醍醐味なんだろうと思うことにする。


「あ、あの小さな女の子がいるお宅か?」

「うん!そうだよ!」

「じゃ、お土産持っていかないとな!」


 Iとのメールのやり取りの中で何度か写真に載っていた小さな女の子に対してお土産を持っていくと約束していたのだ。


 俺はIに連れられるまま、お土産を持って隣のお宅に訪問する事になった。