Seven's Thai & Vietnam

40半ばにしてタイに目覚める。擬似恋愛に憧れるが未だ擬似恋愛した事がないオッサンの哀歌。

プロローグ

Profile:[ seven ]
①結婚していても恋したい
②離れていても愛されたい
③色んな女性と遊びたい
そんなオバカな夢を追い続けるオッサンのThai旅行記。
果たして願いは叶うのか・・・
現在、仕事でベトナム潜伏中

妄想第1話 8回目の失恋

すっかり生温くなったシンハービールをグッと飲み干し、叩きつけるようにテーブルに置く。所々表面が禿げかかった茶色の古びたテーブルから乾いた音が店内を響かせる。




その音にギョっとして隣のテーブルに座っている2人組の女性が目を丸くしてこちらを見る。




さっきからカウンターの前で黒髪の太ったウエイトレスがこちらをチラ見している。不審な奴だと思われてるのだろうか。




口の中にはあの独特なシンハーの苦味と、炭酸が抜けた後味の悪さが広がり、不快指数が更に高まる。




「水をくれ!」




そう頼むと、ノシノシとウエイトレスが歩み寄り、ミネラルウォーターと氷の入ったコップがテーブルに置かれる。




こちらのイライラを察知してか、ウエイトレスは変な愛想笑いを浮かべたあと、ノシノシとカウンターへ引き下がる。




あの浅黒い顔の二重顎と、数日も髪を洗って無いような、変にツヤのある黒髪が俺の不快度を更に上げてくる。




(いかん、いかん、あのウエイトレスは何も悪く無いのに・・・)




直ぐさまコップに水を注いで一気に飲み干す。少しづつ心が落ち着いてきた。スクンビット通りの喧騒と無数のクラクションの音が耳に飛び込んでくる。




腕時計に目をやると、Nokがトイレに立って30分が経っていた。




薄々は気付いていたんだ・・・




Nokは俺から金を受け取った後、トイレに立った。俺は彼女を信じたかった。化粧を直して一段と綺麗になったNokが席に戻ってくると。




Lineを送る。勿論返事は来ない。彼女のLineホームを見る。さっきまで閲覧できたのに既に見れなくなっていた。ここで彼女の意図は確定した。




電話を掛けるのは辞めた。この行為に何の意味も無いことは判っているから。




心臓が高鳴る。それを抑えようと大きく息をする。そしてもう一度コップに水を注いで飲み込む。




「チェックお願い」




「あと、トイレに行く」




カウンターでウエイトレスが計算している横を通ってトイレに行く。俺が座っていたテーブルからは死角だが、トイレの前の通路に出口があり、路地に通じていた。




(ここから出て行ったんだ・・・)




俺はそのまま用も足さずに振り返ってウエイトレスの横まで歩く。




ウエイトレスは450パーツと書かれたメモを見せながら、先程と同じ愛想笑いと聞き取れない早口でトイレの前の出口を指差した。




女に逃げられた一部始終をウエイトレスは見ていたって事だ。さっきからこちらをチラ見していた理由が今やっとわかった。




恥ずかしさと惨めさが一気に込み上げる。500パーツ札をウエイトレスにサッと渡すと釣りも受け取らずに店を出る。




早歩きでホテルのあるソイ19へ向かう。ブアッとした熱気とすれ違うのも困難なほどの人混みを掻き分ける。




早歩きと熱気でまとわりつくような汗が全身から滲み出る。とにかく今はホテルに戻って心を落ち着けたかった。




ルアムチットプラザの前で、がたいの良い女に腕をガシッと掴まれる。異常なほどの力。




俺はその女を睨みつけ、勢い良く腕を振りほどきそのまま歩き出した。女は理解できないタイ語で大声を出して何か言っている。




ソイ19に入った途端だった。見慣れたネオンと屋台が目に入ると同時に涙が溢れてくる。涙を手で拭う事なく声だけ押し殺して真っ直ぐ歩く。




ファミリーマート前の屋台でクィッティアオを食べてるOL風の女性が俺の泣き顔に気付いて隣の友達に俺の話をしている。




もうどうだっていい。ウンザリだ・・・タイに天使なんて何処にも居ない・・・




ホテルに戻り、部屋に入るとベッドに飛び込む。涙が止まらない。そのくらいNokが好きだった。いい歳して声が出る。街中では声は殺せたが、部屋では無理だった。




ひとしきり泣くと移動の疲れと重なっていつの間にか眠りについていた。




そしてタイで8回目の失恋となった。



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タイナイトブロガー

妄想第2話 Nok

女性の大声と掃除機の唸り、そして掃除機の先が壁に当たる「ゴツゴツ」と言う音で目が醒める。




どうやら隣の部屋ではハウスキーパー達の掃除が始まってるらしい。目覚めた部屋の中は真っ暗でカーテンの隙間から日光が僅かに漏れている。




(今何時だろ・・・)




ベッドから這うようにして起きるとカーテンを勢いよく開ける。一瞬日光が眩しくて目に手をやりながら外の様子を伺う。コンタクトしたまま寝てしまったらしく、目が乾いて開けづらい。




タクシーとバイクタクシー、そして会社に向かうサラリーマンらしき人々が歩いている。そしてTシャツに短パンの白人、アジア人達も目に入る。至っていつものバンコクだ。




机の上に置いてあったコンタクト用の目薬を差して、時計を眺める。ちょうど朝の9時半を過ぎた頃だった。




隣の掃除の音が余りに煩いのでちょっと文句言おうと思ったが、安宿だけに壁も薄いしハウスキーパー達の質も低いのは仕方ない。




テーブルの上にある常温のサービスウォーターの栓を外して一気に飲み干す。そしてマルボロメンソールに火を付ける。




ふぅ・・・




ソファに座り、一服し出すと昨日の出来事がフツフツと心に滲み出てくる。




なんでこうなったんだ・・・




昨日の午後にバンコクに到着し、Nokは空港で俺の到着を待っていた。Nokはコヨーテだから仕事終えても寝ずに待ってくれていたと言っていた。




一緒にホテルにチェックインすると直ぐに愛し合った。二ヶ月ぶりのセックスで燃えた。燃えたはずだった・・・




今思えば何か違和感はあった。Nokは元々ディープキスを嫌がらなかった。でも昨日は「タバコ臭いよ」とか言って唇同士が触れる程度。舌は絡み合う事は無かった。




それと、しきりと誰かとLineしていたのも気になっていた。ダンサー仲間だと思っていたけどいつもより回数が多かった。




あと、今回訪泰した理由・・・金だ。




確かに今まで会った日数分はそれなりにお金を渡していた。それは彼女の家族への仕送りの補助として、そして恋人としての甲斐性のつもりだった。




だから1日当たりの支払額は3000パーツ程度。コヨーテだから客は取らないと言っていたが、店を休んで丸一日付き合ってくれるのだから日当以上は渡してるつもりだった。




そして彼女もそれで良しとして受け取ってくれていた。何度も何度もワイしてお金を受け取る姿は今まで見た娘達より心が篭っていたように感じた。




それが1週間ほど前にLineでNokから金の相談が入った。元々彼女の両親は片親で母が田舎に居るとは聞いている。




・母親の実家が借金のカタに取られる
・母親をバンコクに呼びたいが金が無い
・今住んでる部屋は店のタコ部屋
・母が来るならアパートで一緒に住みたい
・敷金として50000パーツ工面してほしい
・約束は出来ないけどお金は返すつもり




こんな内容だった。思わぬ大金でかなり悩んだが結局援助する事にした。タイ仲間からは捨てるつもりで渡せと言われ、覚悟した。




夜になって食事に行く途中、ナナ駅近くのVASUで両替して、近くのタイ料理屋に入ってお金を渡したのだった。




「ありがとう、お母さんと暮らせる。本当にありがとう。お母さんが来たら貴方の事紹介するね。お母さんも会いたがってたよ」




そんな事を言われ、俺は舞い上がった。だって20歳近く若い子に親を紹介すると言われて期待しないわけが無い。




そしてNokはトイレ立った。それが彼女と俺の最後の瞬間だった。




また泣きそうになってきた。騙された事、大金を失った事、旅費を入れたら相当な額だ。




もう一度新しいタバコに火をつける。大きく煙を吸って心を落ち着かせる。




今回の旅はNokにお金を渡すのが目的なのと急なので休みが取れなかったため、一泊の弾丸ツアー。今日の昼便で帰国なのだ。




もうタイに来る事は無いだろうな・・・旅行者には本当の恋は叶わないよ、やっぱり・・




悟りを開いたように頷くとおもむろに立ち上がり、辺りを見渡す。




さ、帰るか・・・




じっとしてると頭がおかしくなりそうで意識的に何か行動したかった。



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妄想第3話 Wの悲劇

シャワーを簡単に浴びた後、荷物を纏めてチェックアウトの準備を始める。一泊なのでリュックサック一つでやって来た。直ぐに準備が整う。




忘れ物は無いか部屋を見渡し、ゴミ箱を除く。中には昨日使ったコンドームとティッシュが無造作に放り込まれていた。




う・・思い出してまた泣けてきた・・・




ここである事に気付く。




さ、財布とパスポートが無い・・・




ぉぃぉぃ・・・や、やばい・・・




腕時計を見る。フライトまであと3時間。部屋中をもう一度探す。ベットの下、風呂場、机の引き出しなんか開けても無いのに確認してみる。




無いよ・・無いよぉぉぉおおおお・・・




落ち着け!よく思い出せ!




昨日の夜、店で金払ってんだから財布はその時点であっただろ。んで、その後ホテルに帰ったんだからあるとしたら歩いていて落とした?




パスポートと財布はいつも右の前ポケットに入れてるよな。尻ポケットならいざ知らず前ポケットから落ちるとかは流石にないだろ。




とりあえず、店で支払った後に直ぐに落としたかも知れないから聞きに行ってみるか・・・




昨日の黒髪デブが脳裏に浮かんでくる。




う・・行きたくねぇぇえええ・・・




荷物を部屋に置いて小走りで昨日の店に行く。歳なのでダッシュは出来ない。つうかダッシュのつもりでも人が見たら小走りだ。




そして店に着くと幸い、昨日の黒髪デブは居なかった。ホッとしながら黒いポロシャツを着た細身のウエイトレスに声をかけようと扉を開ける。




今日のウエイトレスは細い割に胸がでかいし、顔も可愛いやんか!イーサン系か!キリッとした顔立ちがgoodやんけっーー!




つうか、今そんな事言ってる場合じゃないわ・・・




「ハァ、昨日の夜、ハァ、財布とパスポートのハァ・・落し物ハァ、ハァ・・ありませんでしたか?ハァハァ・・・」




息を切らしながら汗だくで拙い英語を駆使しながら話しかける。ウエイトレスはこちらの会話が終わるか終わらないかのタイミングで答える。




「ノー」




おい、即答かいな・・・そらキモオタデブの俺がハァハァ言いながら汗だくで話しかけてきたら少しは引くのだろうが、そのあからさまな不快顔はないだろー・・・




首を振りながら白け顔で答えるそれはまさにツンデレ。今日帰国じゃ無かったなら絶対デレさせてやるわ、マジで。




いやいや、今そんな事を考えてる場合じゃねえ!これからの俺の人生に関わるんや・・・




「い、いや、昨日この店で財布とパス・・」




「ノーッ!」




くぅ・・・




まぁダメ元なのはわかっちゃいたけど・・・




詰んだ・・・俺詰んだよ・・・ママン




トボトボとホテルに向かって歩き出す。足取りが重い。どうすりゃいいのか。パスポートだけでもあればなんとかなったような気もするが、空港行く金とかはどうすれば・・・




ふふ、ふふふ・・・変な笑みがこぼれてくる。これがナチュラルハイと言うヤツか。徹マンとかで時々起きる現象・・・久々だわ・・・




昨日からのダメージ続きで心が壊れてきているのだろうか。はたまた、考えすぎて思考がストップしているのか。意味不明な笑いがやがて、大声で笑いながら歩く自分がそこに居た。




「ははははっひっひ、ふふふぁっはっはっ」




その時、急に足が止まる。ルアムチットプラザの前だ。確かここで・・・




走馬灯のように昨日の出来事が脳内再生される。




確か背が高くてでかい女に腕掴まれて・・・




直ぐに後ろから抱きつかれて・・・




尻とか腰の辺り触られて・・・




俺が怒って手を振りほどいて・・・




ん?尻とか腰の辺り触られたよな・・・




アアアアッーー!




あ、あのカマ(アマ)ぁぁあ!




俺、オワタ・・・



妄想第4話 プチサバイバル

部屋に戻るとiPhoneを探す。取り敢えず日本に連絡してなんとかせねば。




ふぁ??・・・なんでiPhoneもねぇの?




いくら思い出してみても昨日夜に店出てからiPhoneをいじった記憶が無い。つうとiPhoneまで一緒にスられたのか?




ちょwwww・・・OMG・・・Orz




少しづつ意識が遠のく・・・が・・・チェックアウトしなくては・・・




「コップンカァー(^_^)」




愛想の良いフロントレディに見送られ、ソイ19に佇む。容赦ない日差しがまだ午前中だと言うのに体力を削って行く。




マジでやばい・・・




先ずは大使館へ行くべきなのだろうが、場所知らないし・・・




散々バンコクで遊んできたはずなのに、ハプニングが起きると何も出来ない自分がもどかしくなる。




もう時間的に帰りのフライトは無理だ。明日は仕事も行けないし、年老いた両親も心配するかも知れん。




ターミナル21の地下にあるフードコーナーで椅子に座りながら、先ず何からすべきか考える。




日本人らしい人を見かけると片っ端から声を掛けてみる。大使館の場所、もしくはお金を貸して欲しいと伝える。




声を掛けたほとんどが中国人か韓国人。勿論会話にならない。日本人だったのは子連れの夫婦と女性2人組の旅行者だった。




子連れ夫婦は大使館の場所を教えてくれたがお金は貸せないと言われた。まぁ、そうだろな。




女性旅行者達はお金を少しくれた。大使館までのタクシー代で、返してくれなくても良いと200パーツを渡してくれた。




もう少し期待してたけど、やっぱり日本人は優しい。しかし、重大な事実にぶち当たる。




「大使館は日曜はお休みですよ?」




「へ?・・・」




顔から血の気が引いていくのがわかる。何この状況・・・




大使館はタニヤ付近にある事はさっきの親子から聞いた。BTSを使えば100パーツ以下で行けるはずだ。




ターミナル21を出てソイカーボーイ近くのセブンイレブンで水とタバコを買う。残りは90パーツ。大使館までギリギリの金額か。




ソイ23入り口にあるカフェ。そのオープンテラスの一番隅を陣取ると、隣の椅子にリュックを置いて一服する。




さて、明日までどうやって生き抜くのか。




生まれて初めての「プチサバイバル」が今始まった。



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妄想第5話 過去最大のピンチ

ソイ23の入り口にあるカフェからボケーっとしながら通行人を眺める。




腹減ったな・・・




チビチビと飲んでいるつもりだった水も、あと一口飲んだら無くなってしまうくらいになっていた。




夕方近くになり、日陰だったこの場所にも日が差し込み出す。




そろそろ場所変えるか・・・




建屋内にあるトイレに入って用を足しながら次の行き先を考える。金無いし、どうしたらいいんだろ。まずは金の工面が先か。




トイレを出て陣取った席に戻ると、テーブルも椅子も灰皿も綺麗に片付いている。




ちょwwww俺のリュックは???




・・しまった・・やってもうたよ・・・




屋内にいる店員に確認する。彼女は席を見たら人も居ないし、物も無いので片付けをしたと言っている。




辺りを見渡すが、俺のリュックを持ってる人なんかいるわけが無かった。




リュックには下着類やソーイングセットなんかと、wifi専用のipadが入っていた。つうかipad使えば日本と連絡が取れたやんか・・・




モゥ駄目・・・全てが悪循環のスパイラルにハマってる。




今あるのはポケットの中の90パーツとタバコ。あとは腕時計、何か売れるものと言えば、買ったばかりのVansの靴くらいか。




リュックも失い、手ぶらになってしまった。




思わず両腕をクロスさせて胸に当てながら




「手ブラ!!」




なんて言ってみたが、周囲からはなんの反応も無い。




店員の女の子は心配そうな面持ちで俺を見ている。俺は敢えて「大丈夫」とばかりに軽く手を挙げて軽い足取りで店を後にした。日本男児として、最後のプライドだったのだ。




俺・・・ここで死ぬのかな・・・




そんな弱気が心の大半を占める。まずは明日まで生き抜く金を工面しなければ。最悪、大使館まで徒歩で行けば、今ある90パーツは使える金のはず。




でも、腹も減ったし、特に喉がカラカラでヤバイ。少なくとも水分は補給しないと命に関わる。




先ずは腕時計を売るしかない。海上自衛隊仕様の限定レプリカモデルなのだが、ネット先行予約で1万円で買ったもの。




このモデルは多少プレミアムが付いているのは知っているが、タイで海上自衛隊ってもな・・・ニーズあるとは思えないし・・・




ここらで時計売るって言えばMBK辺りか。出来るだけ歩いて向かって最悪BTSで行けばいい。そんな考えてMBKを目指す事にした。




アソーク方面に向かってスクンビット通りをテクテクと歩み出す。BTSの高架沿いを歩けばなんとかなるだろう。




因縁のルアムチットプラザ前に近づく。遠目に見える立ちんぼ。バス停の前でウロウロしている。黒髪ロングでイキッた肩。異様に背が高くて肩幅も広い。




なんか昨日のカマに似てるな・・・




自然と足早になる。段々と近くなり、彼女の輪郭がハッキリしだす。間違いない・・・あのニューカマーだ。




「おい!テメェえええ!」




ヤツに向かってダッシュする。勿論、人が見たら只の小走りだが。




ニューカマーはこちらを見てハッとした顔をする。と、同時にナナ方面にダッシュした。




「ちょ、待って!待てって・・・おーい、待ってください・・・頼む・・頼むから・・・綺麗なお姉さぁぁああん・・・」




走る時の手と膝を挙げるフォームが余りにも美しい。正にアスリート、いや、「女豹」と言うべきか。




自分との距離がグングン広がり、突然右の路地に消えた。




もう追いかける体力も気力も失い、いつしか歩きに戻っている自分。大きな息と、大量の汗でシャツはベトベトになっている。




この俺を巻くとは・・・あいつ・・・中々やるな・・・




妙な感心をしながらナナ駅の階段を登る。そしてBTSでMBKへ向かうのであった。




なるべく歩いて行くはずが・・・使えねーわ、俺・・・




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妄想第6話 倒れる・・・つうか死んだ

バンコクと言うか、東南アジア全体に言えることだが、エアコンの冷気の強さは半端ない。




今乗っているBTSもそうだ。特にMRTなんかは冷凍庫並みの寒さ。車内のこの異様な寒さの目的は何なのだろうか。絶対に身体に悪い。




お使いで買った物が腐らないように配慮でもしているのだろうか。もしそうだったらある意味凄い。




汗だくの俺は一気に身体が冷えて行く。最初は気持ち良いのだが、徐々に必要以上に体温を奪い、身震いが始まる。他の客は至って普通にしてるのだが、タイの人は皮膚の神経が鈍感なのだろうか。




目的のナショナルスタジアム駅に着いた頃にはクシャミと鼻水で、少し頭も痛くなっていた。




連絡通路を歩き、直接MBKに入る。目指すは腕時計を扱う店。買取りしてるかは聞いてみるしかない。




腕時計と言うか、コピー品を売ってる店が多いのだが、買取りとなると俺の時計を見た瞬間、首を振って話にならない。




やはりブランド物オンリー、もしくは買取り自体しないのだろう。1階から順番に回るも、全てアウト。しかし、6階で奇跡が起きる。




「よく見せて!」




「は、はい」




初めて時計を外して店員?店長?に手渡す。




「このブランドは日本ですか?」




「は、はい。ケンテックって言う日本の軍隊に腕時計を下ろしてるメーカーです」




「でも私は知りませんね」




「そ、そうですよね・・・(^_^;)」




結局はこうなる運命なのか。するとその人は電卓に入力し、俺に見せて来た。ハハ、神様っているんですね(^_^)




電卓に表示された金額はなんと!!




50パーツ・・・




何言ってんのこの人・・・




「アップ・・オッケー?」




「ノー」




「・・・・・アップ・・・オッケー?」




「ノー・・・」




沈黙が流れ、身体が固まる。俺、マジで今日が命日かも・・・




店の人は佇む俺を見かねたのか




「オッケー、オッケー」




と電卓に新しい金額を表示する。そこには150パーツと言う最初の3倍の提示額が記されていた。




「OH・・コップンカップ!!」




泣けてきた。見も知らない日本人に3倍の金額で買い取ってくれるタイ人に感謝。今日のあなたはブッダです。正に彼は今、俺に対してタンブン・・・徳を積んだのだろう。




店員は何故か自分の財布を取り出し、150パーツを俺に渡す。それで商売成立。俺は3倍の提示に満足してその店を立った。




しかし、腕時計もiPhoneも無いと不便だ。第一、時刻がわからない。なんか安く腕時計を売っちゃったなー、と少し後悔。でもそのお陰でコーヒーとパンをセブンイレブンで買えたわけだし。




時間は夜7時頃か。MBKのトゥクトゥク乗り場の前に腰を下ろし、タバコを吸う。辺りは暗くなり、すっかり夜のバンコクだ。




胸の開いた派手な服装のネーチャン達が至る所で目に入ってくる。店に行く前の準備なのだろうか。




残りの金は180パーツほど。ここから大使館は歩いて行けそうな距離。多分1時間くらいじゃ無いだろうか。それなら今晩で持ち金全部使えそうな計算だ。




ふふ、贅沢できるぞぉ・・・




近くのセブンイレブンでシンハーの缶ビール2本を買う。つまみは揚げた海苔に塩がかかったハングル文字のやつを一つ。占めて80パーツ。




セブンイレブンの前で缶ビールとつまみを楽しむ。そこから2時間ほどチビチビ晩酌をしながら通行人ウォッチング。



こうしてのんびりしてるのが良いんだよね・・クラクションの音やらバイクのエンジン音、人なんか居たって、関係なく突っ走ってる。こういうの見ると、外国に来たんだなって。




また耳元で車のクラクションの大きな音が鳴り響く。こいつら本当にお構いなしだww




さて・・・ウォッチングも飽きたし、そろそろ寝る場所の確保だ。なんか店に夜の商売してるような人達もわらわらと集まってきたし、邪魔者は去るべし。




歩いてタニヤに向かう。もしかしたら知り合いに会って何かが起きるかも知れない。そんな気持ちも多少あった。




時間はもはやわからない。タニヤに着くと路上のネーチャン達をチラ見しながら、ラーメン屋の前でタバコを吸うおっさんの横に座る。




その時、既に頭が割れるほど痛く、鼻水が無限に垂れてくる。頬や首筋は暑いのに腰や背筋にゾクゾクとした寒さを感じる。完全に風邪か。




幸い、雨は降ってないし金も無い。寝ても盗られる物も無いのだから・・・と、路地に入って路肩に寝転がる。




ハハッwwwこれって夢かもwww辛すぎww




時々誰かの足音と話し声がするが、気にはならない。頭の痛みと鼻水、そして自分の心拍だけが聞こえてくる。次第に意識が遠くなり、全ての音が完全に聞こえなくなった。




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妄想第7話 シャム双生児

お経のような低く野太い声。瞼の隙間からロウソクの灯りのような暖かみのある光が薄く入ってくる。




自然と目が開いた。自分はさっきの路地に寝転んでいる。しかし、周りは暗く、タニヤ通りから聞こえる喧騒は皆無。そのかわり目の前の路上には無数のロウソクが火を灯しながら立っている。




女性らしき声がする。丁度寝転んでいる頭上側からだ。




「起きたみたいよ・・・」




「へぇー、可愛い顔してるね」




このおっさんを見て可愛いとか言いますか。起き上がってそちらを振り向く。




ちょうど2メートルくらい先に2人の女性の姿が見える。座ってこちらを覗いていた。不思議なことにタイの民族衣装と言うか、キンキラの服装。タイ舞踊ショーで見た事のあるアレだ。




その2人の奥側にはタニヤ通りがあるはずなのだが、何故か真っ暗闇で何も無いように見える。




不思議な香の香りと何処からか聞こえるお経?みたいな声。反対側の道路もロウソクの灯りより奥は真っ暗闇だった。




俺は状況が掴めず、キョトンとした顔で2人の女性を見つめていた。彼女達は化粧をしていたが若いことは何となくわかる。恐らく15〜16歳位の美少女だ。顔は白いが首からは少し浅黒い。




向かって右側の子が話し出す。




「あなたは優しいですか?」




「は、はい?」




「誰にでも優しくできる方なのですか?」




「え・・・えと・・・」




何言ってるんだこの子達・・・つうか日本語話せるの??




女の子同士で何か話し出す。




「ね、この人違うんじゃ無いの?」




「ううん、この人そうだよ」




「でもパッとしないし・・・変くない?」




おぃおぃ、なに可愛い顔して厳しい事言ってんのwwさっきあんたでしょ、俺の寝顔が可愛いとか言ったのww




「私ずっとこの人見てたんだよね、タンブンに来た時からずっと見てたんだ」




再び俺を見る。




「あなた、意識がこちら側に来ちゃってるんですよ、わかります?」




「こちら側って?何処ですか?」




「はっきり言いますと、あなたは死にました。あ、正確には身体活動が停止した瞬間が今です」




「へ?・・・・嘘だぁwww」




「あんた、後ろを見てみなさいよ」




さっきから失礼な事を言う左側の子がぶっきらぼうに話しかけてくる。後ろを振り返る。




俺が真後ろで寝てる。つうか寝てる頭が俺の座ってる腰と重なって肩口あたりから寝たままになって見える。




「うわっ」




マジ腰抜けた。俺が俺から抜け出てる?みたいな。




「あんた、このままだと本当にこっちの住人になるよ?」




「だからあなたに伺っているのです」




「は、はぁ・・・」




「あなたは誰にでも優しくなれますか?」




「優しく?ま、両親や親戚から、お前は本当に優しい子だとか言われた事有りますけど」




「プッwうわっ、自画自賛してる。キモッ」




(こ、このクソガキ・・・・)




「私はあなたをずっと見てきました。タンブンに来たその日から。貴方は優しい方です。どんな人も愛せる心が有ります」




「はぁ、ありがとうございます・・・」




「貴方にお願いがあるのです。ここにいる、不幸せな人を幸せな気持ちにさせてあげて下さい」




「性的にじゃ無いのよ?わかる?」




(くっ・・・・)




「要するに生き返る事が出来るんですか?」




「そうなりますね」




「お願いします!まだ死にたく無いです」




「でも運命に逆らうのですから、代償は有ります。これから出会うどんな人も幸せにしなければならないのです」




「幸せ?一生幸せにするのですか?」




「一瞬でも良いですよ、その人が幸せを感じて進むべき道が見えたなら、それが条件です」




「幸せに出来なかったら?」




「死ぬに決まってるじゃんwwバカじゃないの?」




流石に右側の子が失礼な事言う左側の子の肩を軽く叩く。




「とにかく余り時間がありません、それで良いですか?多少の支援はするつもりです。目覚めてから確認して下さい」




「あ、まだ色々質問が・・・」




「うっさいなー、贅沢ばっか言うなー」




2人の女の子が立ち上がり、背を向け暗闇に向かって歩き出す。その姿を見て絶句した。




おい・・・身体が腰から一つに繋がってる。イメージで言えば英語のYだ。わかる?




暗闇に彼女達が消えると目の前がふと真っ暗になり、ザワザワとした喧騒が耳をつん裂く。ガヤガヤと人の声が聞こえる。




ん?この人達の声、みんな日本語だそ??




再び目が醒める。




「大丈夫?」




しゃがみこんで俺を眺める女性。目の前にその子の真っ白いパンティが至近距離で目に飛び込んで来た。




ここタニヤはSiam(サイアム)近郊、昔のSiam王朝が統べた土地。胴体が繋がるシャム双生児と呼ばれる人達はSiam双生児とも言われ、Siam王朝では決して珍しく無い奇形として存在していたと言う。




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